夏の漢方のシリーズ。最後は夏風邪の処方について触れてみましょう。
夏の風邪は悪寒が軽く、悪寒の時期が短いのが特徴です。
悪寒がなくなるのが早く(あるいはなく)、熱感から発汗するようになります。
冬の感冒期に使う麻黄湯(まおうとう)のように温めたり、発汗力の強いものは夏風邪には向きません。
「新型インフルエンザ」が流行していますが、感染症で発熱のある時は
①初期に悪寒をともなう場合と、
②悪寒が無くて熱感だけ、の場合があります。
初期に少し悪風や悪寒があり短時間で熱感に移行する場合があります。
こういった時には「桂枝湯(けいしとう)」を用います。
※桂枝湯
シナモンの原料となる桂皮(ケイヒ)を配合した漢方処方です
熱感型の感染症の場合には辛温(味がピリット辛くて服用すると体が温まるもの)の生薬を用い、発汗させて悪寒や頭痛、筋肉痛、四肢痛、腰痛、関節痛などの身体外部の症状を緩和します。
辛温解表薬(しんおんげひょうやく)といってその代表が桂枝や麻黄です。
ところで皆さんよく御存知の「葛根湯(かっこんとう」。
「葛根」は辛涼解表薬(しんりょうげひょうやく)として肌熱(外表面の熱感)に効力を発揮します。
そこで加味方として「甘草(かんぞう)」と「桔梗(ききょう)」を加味すると「桔梗湯(ききょうとう」といって、ノドの痛みに強い処方となります。
これに「生姜(しょうが」「大棗(たいそう」」を加えると、「排膿湯(はいのうとう)」となり、去痰、排膿、咽痛によい処方となります。膿などを体外に排出してくれるなど化膿性皮膚疾患に使われます。
さらに「石膏(せっこう)」を加味しますと強力な抗炎症薬となり、強い消炎解熱効果をもたらします。
◆葛根湯加桔梗石膏(かっこんとうかききょうせっこう) 市販でも手に入ります。
葛根(辛涼解表薬)、麻黄、桂枝、生姜(辛温解表薬)、石膏(清熱薬)、桔梗、芍薬(しゃくやく)、大棗、甘草(咽痛排膿去痰薬)
もうひとつ紹介しておきましょう。
悪寒型感染症として流行性の耳下腺炎や咽頭炎に効果を発揮する処方があります。
最近は運動不足で、しかも食生活が贅沢となり胃に負担をかけることが多くなったのかもしれません。
そんな現在では、葛根と麻黄は胃弱な人に向きません。
そんな人には「駆風解毒湯(くふうげどくとう)」が処方されます。
ノドがいたくて唾も飲み込むことができないような時に、この「駆風解毒湯」が傍にあれば安心。
◆駆風解毒湯 市販でも簡単に入手できます。
荊がい、防風(ぼうふう)、きょう活(辛温解表薬)、牛蒡子(ごぼうし、辛涼解表薬)、連翹(れんぎょう、清熱薬)、甘草(咽痛・排膿去痰薬)
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