「最近病院でもらっていた漢方がよく効いたのですが、「○○湯」というのはありませんか?」
と買いに来られる処方のひとつに 芍薬甘草湯 があります。
今回は、速効性のあるこの処方を紹介します。
この処方は名前のごとく、二味(2つの生薬)からなる単純な処方ですが、
筋肉の鎮痛鎮痙作用が非常に強く、腿(もも)に打つ注射にも匹敵するほど有効とされています。
胆石症の発作や尿感結石で転げまわる痛さ、中空臓器(胃など)の平滑筋に起きた痙攣性の痛みに効果を発揮します。
いわゆる「筋肉の痙攣(例えば、こむら返り)や痙攣性の痛み」に用いる基本処方といえましょう。
構成する基本生薬は「芍薬」と「甘草」の2つ。
「芍薬」は鎮痙鎮痛作用があり、体内の胃や子宮の平滑筋に対して収縮力を減弱することにより運動を抑制するとされています。
「芍薬」の配糖体には中枢神経系を抑制する(鎮静)効果があるとされています。
さらに四肢の骨格筋における痙攣や、臓器の平滑筋に鎮痙鎮痛効果があるとされています。
「甘草」にも筋肉の痙攣をゆるめる作用があり、”急迫を治す”とされ、急な症状を和らげる作用があります。
芍薬甘草湯が用いられる症例です。
◆腹痛
古来の書には、「芍薬甘草湯、腹痛を止めること神の如し」とありますがまさにその通りで、現在でも激しい腹痛には頓服的に用いられています。
◆消化管の激しい痙攣性の痛みや胆石症の発作、尿路結石症の痛み
ただし「芍薬」そのものの性質は”やや寒”であるため、お腹を冷やしてしまいます。
炎症や熱がある場合はよいのですが、寝冷えなどから生じた腹痛にはよくありません。
そんな場合、温の生薬を配合した「桂皮加芍薬湯(けいしかしゃくやくとう)」、「小建中湯(しょうけんちゅうとう)」が用いられます。
◆大腸炎でしぶり腹などの痙攣性の痛み
体があつく、口は乾いて苦く、舌もあかくて炎症のある場合には「黄ごん」「大棗(たいそう)」を加えた「黄ごん湯」が使われます。
◆骨格筋の拘攣
寝違い、肩こり、五十肩、腰や背中の筋肉痛などにも広く用いることができます。
(東洋医学研究家、薬剤師、松田昇)