<お血(おけつ)>
「お血」とは血液が血管内をスルスルと通過せず、途中で滞ったり詰ったりする状態をいいます。滞った血液は、血液本来の役割を果たせず、むしろ有害なものと化します。(非生理的な血液の状態という言い方もします。)
「お血」の原因にはいくつかのものが挙げられます。
・内的外的要因(主にストレス)
・運動不足
・睡眠不足(寝不足)
・食べ過ぎ(特に脂質の多い食事)
・便秘
これらにより血液の血管内を流れる流速が低下したり、血管の途中に岩様の障害物ができるとか、血管の壁面にコレステロールが蓄積して血液の通る道が細められたりで血液が滞ったり、途絶えたりします。
主な症状です。
・冷え(特に下肢の冷え)
・不眠や精神不穏
・発作的紅潮(ほてり)
・筋痛・腰痛
・眼輪部のくま
・痔疾患
女性は、次の2つがプラスされます。
・月経障害
・皮下溢血(あざ)
◆主な生薬
・牡丹皮(ぼたんぴ。ボタンの根。熱をさまし血行を良くする)
・桃仁(とうにん。ももの種。血栓を解消し腸を潤す)
・芍薬(しゃくやく。血行を改善して、お血を除く)
・川きゅう(せんきゅう。痛みを和らげ気・血の巡りを改善する)
・当帰(とうき。血を補い血行を良くする)
・紅花(べにばな。血栓を解消する)
◆代表的な処方
・桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん。芍薬・桃仁・牡丹皮・桂枝(けいし)・茯苓(ぶくりょう))
・当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん。当帰・川きゅう・芍薬・白朮(びゃくじゅつ)・茯苓・沢瀉(たくしゃ。サジオモダカの根茎))
・桃核承気湯(とうかくじょうきとう。桃仁・桂枝・大黄(だいおう)・芒硝(ぼうしょう。硫酸ナトリウム)・炙甘草(しゃかんぞう))
桂枝茯苓丸は駆お血剤(く・おけつざい)の代表処方です。
当帰芍薬散は、冷え症で色白タイプ、貧血傾向の血虚で水滞を伴うことが多い(体質的には虚証の)人向け。桂枝茯苓丸とともに女性の漢方の双璧をなす処方です。
桃核承気湯は、便秘が強く、気逆(きぎゃく)をともなう人向き。(東洋医学研究家、薬剤師 松田昇)
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