「血」とはまさしく人体の脈管を流れる赤い血液のこと。東洋医学では「気」の働きによって体内を巡っていると考えます。正常な状態は「営血(えいけつ)」と言われ、全身を巡り、身体に必要な栄養をもたらしています。
逆に「血」の異常には、「血虚(けっきょ)」「お血(おけつ)」があります。
<血虚(けっきょ)>
「血虚」とはカラダを巡る血液の量が不足している病態。
血を充分につくり出すことができないか、消耗が激しくて血の不足を生じている、のいずれかが原因と考えられています。
西洋医学の「貧血」と同じもので、主な症状を挙げておきます。
・皮膚の乾燥と荒れやあかぎれ
・眼精疲労
・顔色が悪い
・こむらがえり
・めまい感
・爪の異常
・頭髪が抜けやすい
・集中力低下や不眠傾向
・過少月経や月経不順
治療方法としては、何が原因で、
・血液の消費が多いのか?
・血液が体外に漏れ出たのか?
・必要量の血液生成ができていないのか?
をつきとめて補血剤(生薬)で血液の生成を助けることです。
特に、気虚を伴うことが多いので、「気」の不足も補う必要があります。
◆主な生薬
・熟地黄(じゅくじおう)-血の生成を促す。胃腸の弱い方には要注意。
・芍薬(しゃくやく)-筋肉の攣急を緩めながら血を補う。
・当帰(とうき)-女性薬の代表。月経を整え血を補う。
◆代表的な処方
四物湯(しもつとう)-当帰、川きゅう(せんきゅう)、芍薬、地黄。血虚改善の基本となる処方で、体力低下時などに最適な処方。
きゅう帰膠艾湯(きゅうきききょうがいとう)-四物湯+阿膠(あきょう。にかわ)、艾葉(がいよう。ヨモギの葉)、炙甘草(しゃかんぞう)。出血傾向のある血虚に用います。
十全大補湯(じゅうぜんだいほとう)-四物湯+桂枝、人参、白朮、茯苓(ぶくりょう。サルノコシカケの一種)、黄耆(オウギ。豆科のキバナオウギの根)、炙甘草)手術後退院後等の体力回復時に。
次回は、「お血(おけつ)」について。(東洋医学研究家、薬剤師 松田昇)
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