今でも薬局の片隅にひっそりと存在しているお薬に「六神丸」(奇応丸)という名の強心剤があります。
この丸薬の効果は「逆また真なり!」とでもいいましょうか、
貫徹仕事や勉強に使う一種の興奮剤として使用されるのですが、逆にぐっすり眠るための鎮静剤として用いられています。
そしてこのお薬は「解毒剤」としても使用されていました。
昔、毒物を盛られたりした時に、これを服用するとものの四~五分で毒物を吐き出してくれるという優れもの。
中毒で下痢した時や、発熱時には、腸内の毒物を四~五分でたちまち大便に出してしまいます。
強心剤でありながら不思議な作用を持っている漢方処方なので、昔から置き薬として重要なもののひとつとなっていました。
もともと「六神丸」は江戸時代には各藩の重要な薬剤として珍重されていました。
中国や台湾では、今でも貴重な薬物として重宝されています。
「六神丸」を服用してからお酒を飲むと、驚くことにいつもは五勺しか飲めない人でもその十倍の五合は飲めると
いわれています。
いわゆる「六神丸」でアルコール分が解毒されるといことでしょう。
興奮剤にもなり、そして「鎮静剤」にもなるという万能薬。
「朝鮮人参」も興奮作用と鎮静作用がありますが、これも天然の薬物を用いる東洋医学の妙味といえるのです。
東洋医学の生薬が体を正常化に導く薬剤であり、体を常に正常な状態に維持するために欠かすことのできない
ものである一例です。
ちなみに薬局には、京都の亀田利三郎薬舗の赤い筒薬で 「亀田六神丸」 としておいてあります。
(東洋医学研究家、薬剤師 松田昇)
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