現代のように栄養学や健康食品がなかった時代のお話。
東洋医学(薬膳)では、適量の食材をバランスよく食べることを第一に考えます。
そのため中国では、甘い(黄色)、酸っぱい(青色)、辛い(白色)、苦い(赤色)、塩辛い(黒色)を『五味』として、それらをバランスよく料理に盛り込む工夫をしてきました。
そして五味それぞれに色をあてはめ、これらの色の食材をバランスよく食べるようにしたのです。
中華料理の八宝菜や酢豚など、この五味が基本になっていますので、思い浮かべてみてください。
五味の詳しい話は、別の機会にしますが、この考え方を現代風にアレンジしてみると・・・。
野菜を基本に考えますと、食材の色は大きく分けて4種類に分類できます。
ひとつ目は緑。ふたつ目は赤。みっつ目は紫、そしてよっつ目は淡黄色。
色のついた野菜や果物、そしてお魚類は紫外線に対する防御本能として「フリーラジカル、中でも老化を早める悪玉である活性酸素」の産生をブロックする抗酸化能力が高く、色素はその証です。
つまりこれらの色の食材を食べることは、食材の持つ抗酸化力を取り入れることと考えることができます。
さすがに東洋医学では、近代科学の知見である抗酸化力という考え方はありませんが、東洋医学で受け継がれてきた「食材を色で配しバランスのよい食事を摂る」という考え方を応用してみると、栄養バランスの良い抗酸化力に優れた食生活を自然に送ることができます。
●緑の色素はクロロフィル。ほうれん草や小松菜などの冬の葉野菜に多く含まれます。
特に濃い緑色には不足しがちと言われる葉酸が豊富に含まれます。
●赤や橙、黄色の色素はカロテノイド。トマトやニンジン、パプリカなどに多く含まれます。
カロテノイドの仲間は600種類以上が知られていますが、トマトのリコピン、ニンジンのβ-カロテン、とうがらしのカプサイシンなどが有名です。
アスタキサンチンもカロテノイドの仲間ですが、シャケやイクラなどに含まれているものです。この色素はもともと海中で赤い色の藻を食べたエビ(プランクトン)が赤い色素を取り込み、それをタイやシャケが食べて表皮や身や卵が赤くなるという仕組みです。
●紫の色素はアントシア二ン。ブルーベリーで有名になりましたが、ナスやシソにも含まれます。
果物ではブドウの皮などに多く含まれますが、赤ワインにはこれが豊富に含まれていますので、薬膳料理に赤ワインを積極的に利用したいものです。
●淡黄色の色素はフラボノイド。アスパラガスやタマネギに含まれています。
●この他にも黒(ゴマ、黒豆、ヒジキ、キクラゲなど)の食材もあります。
もちろん食材のもつ抗酸化力は色素だけではありません。
ビタミンCやビタミンEなどのビタミン類にもそのような力があり、食材をバランスよく適切に組み合わせることで相乗効果を狙うこともできます。
老化を早める悪玉である活性酸素は、動脈硬化、糖尿病、心臓病、脳卒中などの生活習慣病の他、ガン、認知症などの元凶といわれています。
シミやシワなどの美容トラブルも促進します。
色のある食材をバランスよく配することで、彩りがあって楽しくおいしく、健康・美容面でも優れた食生活を送ることができます。
(薬剤師、東洋医学研究家、松田)