漢方の基礎として、「気」「血」「水」の考え方を知っておくと便利です。
まず、「気」「血」の思想は中国の金元時代に生まれました。
身体を循環して生命を維持するものとして「血」を考え、その他に「気」というものを考えたのが最初です。
「血」は、血液のことですから見えるもの。
これに対して、「気」は気体のようなもので見えません。
身体で表現すると、元気、病気、気分が悪い・・・・などの言葉が示すように、見えないですが、たしかに存在し、働きのあるものとして考えられます。
古代中国の陰陽論では、気が陽で、血が陰とされます。
陽とは精神的、機能的なもの、陰とは肉体的、器質的なものという分類にもとづいています。
江戸時代の日本で、「気」「血」の理論がさらに発展しました。
血をさらに「血」と「水」に分けた人がいたのです。(吉益南涯(1730~1813))
「水」は血液以外の体液一般をさし、リンパ液なども含みます。
そして「水」(体液)には2タイプあると考えました。
生理活動に利用される状態にある体液を『津液(しんえき)』、生理活動に利用されない(余分な)状態の体液を、『痰飲(たんいん)または水毒(すいどく)』、と呼びました。
体液が、水毒として滞っている状態を「水滞(すいたい)」と呼びます。
「水滞」は、中国漢方の「湿」とほぼ一致します。
もちろん「水」の巡りと「血」の巡りは密接に関係します。
そして「気」に影響したり、逆に「気」の影響を受けたりします。
たとえば、『気分が悪い』『元気がない』といった「気」の不調の段階から、貧血やうっ血のような「血」の不調の段階に入ることもあります。
初期の段階では、「気」の滞りは「血」の滞りほど重篤ではないにしても、漢方的には見逃せないポイントのひとつとなっています。
要は「気」「血」「水」が過不足なく、滞りなく、全身を巡っていれば健康であり、さもないと、(未病から)病気になるということですね。
漢方医は、人それぞれにあった生薬を処方する時に、「気」「血」「水」のバランスを整え、流れを正すという考え方をします。
漢方医でなくても、「気」「血」「水」をある程度理解しておくと便利。
日ごろから自分の体調を把握する方便として使えますし、それらの自覚をもとに、未病のうちから手を打てるようになる(セルフメディケーション)からです。(東洋医学研究家、薬剤師 松田昇)