西洋医学には「冷え症」という病名がありません。
中国の古医学書や朝鮮や日本の漢方の書にも「冷え症」の綱目がありません。
では冷え性とは、日本独特の病なのでしょうか?
「南山堂(医学大辞典)」を見ますと、
「冷え症とは身体の他の部分はまったく冷たさを感じないような室温において身体の特定部位の特に冷たく感ずる場合で、その発現は絶対低温だけにより決定されるものではない。そしてその原因は単なる卵巣機能異常によるというより自律神経障害によるものであろう」と記されています。
これによると血行障害等のため局所に冷たい部分ができて、それを「冷え」と自覚するというものです。
すなわち他覚的にも自覚的にも皮膚に冷たい部分が生じるという事です。
内因的には陽虚・湿証・お血、そして外因として寒邪・寒湿の邪を受けたものと解釈されます。さらに単独のものや複雑に組合わさったものなど、さまざま。
体に寒が多くて冷えすぎている冷え症には、温熱の生薬を与えて体を温め、正常に戻します。
そこで温熱性の生薬で寒証に用いる生薬をいくつか紹介しましょう。
【陽虚型に効果、温熱性の生薬】
①干姜(かんきょう)
乾生姜のことでお腹を温め、血行を良くし、胃の働きを良くして食欲を高め嘔吐を止め、冷えでおきる腹痛や下痢に使われます。
また腸のぜん動を抑制する働きがあるともいわれています。肺が冷え咳のあるものにも効果があるといわれます。
②生姜(しょうきょう)
八百屋にある「ヒネショウガ」。
温める力は①に劣るものの嘔吐を止める作用がすぐれています。
利水作用や発汗作用があり、水滞(新陳代謝不足による体内停留水)のある時には干姜と組み合わせるとより一層効果があります。
③附子(ぶし)
新陳代謝を盛んにし、熱を産生し血管を拡張して血行を良くして冷えを温め、体の働きの衰えによる下痢、腹痛、筋肉痛、神経痛等に用います。
干姜と合わせると寒を温める作用をより強くします。
④呉茱萸(ごしゅゆ)
お腹を温め胃の運動を正常にして嘔吐を止め、胃が冷えて胃内部に水が多く、だぶつく(胃内停水)場合、胃が痛み頭痛がして手足の冷えるものに人参や生姜と合わせて使います。
⑤当帰(とうき)
おなじみの生薬。
血管を拡張し、血流をさかんにして手足や体の冷えを温めて痛みに効果ありです。
子宮の筋肉の痙攣を穏やかにして子宮の血流を盛んにして子宮の発育を良くし月経痛を止め、月経不順を正常にします。
◆漢方における冷え性の分類と対策
お血型の冷え症
陽虚型の冷え症
湿証型の冷え症
(松田昇 東洋医学研究家 薬剤師)
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