冷え症についての二回目、湿証型についてお話します。
湿証(=水滞型)、つまり水分の代謝がうまくなく、細胞内や細胞組織間隔に水分が停滞する体質の方に有効な生薬をご紹介したいと思います。
水滞体質の体内滞留水は冷えやすく、血管を圧迫して血流を妨げるので、よけいに冷たく感じるものなのです。
ちなみに消化管に水分停滞や冷えがあれば胃のあたりが冷たく感じられ、薄い水を吐いたり口中に飲み込めない様な唾液が出てきます。さらに大便が軟らかい、下痢をして水分が消失しているのに口渇もなく尿量も少なくて尿の色も白いというような状況があります。
胸に水滞があって冷えると、水鼻やくしゃみが出て喉がゾロゾロ鳴る、背中が寒いゾクゾクする等のことがおこります。
皮膚や皮下に水量の多い水滞があると浮腫となることも。
そして、その水分が毛細血管を圧迫すれば血行が悪くなり仮性貧血を起こしたり、神経を圧迫すると知覚麻痺やしびれ感があらわれ、座った時にしびれが来たりするようです。
筋肉に水滞がある場合は体が重たい、かったるい感じで動くのが苦痛とか!
最後にこむら返りなどの筋肉痙攣や体の筋肉が不随意的にピクピク動いたりすることを経験されているでしょう。それこそが水滞の状況なのですね。
もうひとつ湿証の特徴として天気が悪くなると症状の悪化がみられることです。
雨や曇った日は湿度が高くて発汗が抑えられ体内に滞留する水分の蒸発が悪いためでしょう。洗濯物も同じですね。
昔は池を埋めた所に立てた家は床下に湿が入るとか言われました。
現代でも鉄筋コンクリ-ト住宅での結露で押入れにカビのような所に住んでいると、水滞型の人は神経痛やリュウマチ、関節炎に悩まされたりするものといわれています。
ちなみに戦国時代の黒田官兵衛が湿けた牢の中で膝関節を悪くして片方の足を不自由にしたという説もあります。
では水滞を除くためにはどんな生薬が存在するのでしょうか。
利湿薬と呼ばれ体内の過剰な水分を尿として排出するもので、作用機序は不明ですが小便の出が悪くて体内に水湿が滞留する水腫、腹水、痰飲などに使われものです。
【湿証型に効果、利湿性の生薬】
①茯苓(ぶくりょう)
尿の量が減り水分が体内に留まって浮腫や腹水が起こったり、消化管内に水分が多くて嘔吐や下痢を起こす場合に用いて溜まった水分を小便で出します。
代表的な処方に猪苓や沢瀉、白朮と配合した「五苓散」があげられます。
他に鎮静作用があり、不眠にも使われることがあります。
②猪苓(ちょれい)
利水作用は①より強く、嘔吐や下痢の激しいときや消化管(特に胃内)に水分が多くてチャプチャプした感じなのに、体は脱水してのどが渇き水分がほしい(山登りした時に皆様も経験されたことがあると思いますが)時に飲んだ水が嘔吐や下痢になってしまう、そんな時に功を奏します。
即ち消化管内の水分が血中に移行し体内が潤い、脱水症状が治まりのどの渇きがとれます。
③沢瀉(たくしゃ)
この生薬は古来中国では利尿作用があり、尿量の増加や尿素の排出が増加するとされ降圧作用、降血糖作用、動脈硬化の緩和等の作用があるとされています。
頭に何かをかぶった様なドーンとうっとうしい感じのめまいに効果ありと昔の大家は述べています。
(東洋医学研究家、薬剤師、松田昇)