海外では「夏バテ」という言葉、あまり聞きません。
高温多湿の日本に特有なもののようです。
ムシ暑くて睡眠不足。
おかげで胃腸が弱り、夏の終わりから秋口にかけて体調を崩す。
夏バテの典型です!
ビタミンB1不足が一番の原因と考えられます。ビタミンB1不足の大部分の人に
・疲れやすい
・夏になると体がだるくてつらい
・手足にむくみがあり
・夜に靴下を脱ぐと靴下の型が足にくいこんでいる
などの症状が見られます。
昔でいう「(潜在的な)脚気(かっけ)」と言えるかもしれませんね。
昔々、夏に東海道を旅する人は、炎天下を長く歩き続けるために夏バテになりやすい。
宿場町では「枇杷葉湯(びわようとう)(※)」を煎じて、道ゆく人に接待していたといいます。
もうひとつは「五苓散(ごれいさん)」。
江戸の商家では使用人の暑気(しょき)あたりを防ぐため、お釜で煎じてお茶代わりに飲ませていたといいます。
以上ふたつの煎じ薬は夏バテ防止に大変重宝がられたと古い書物に記されています。
夏バテの場合、ほとんどが虚証~中間証の処方といえます。
<処方例>
①清暑益気湯(せいしょえっきとう)(人参・白朮・麦門冬・五味子・陳皮・甘草・黄柏・当帰・黄耆)
②五苓散(ごれいさん)(澤瀉(たくしゃ)・猪苓(ちょれい)・茯苓(ぶくりょう)・朮(じゅつ)・桂枝)
③補中益気湯(ほちゅうえっきとう)(黄耆・人参・朮・当帰・陳皮・生姜・大そう・柴胡・甘草・升麻)
④十全大補湯(じゅうぜんだいほとう)(人参・黄耆・朮・当帰・茯苓・塾地黄・川芎・芍薬・桂枝・甘草)
※枇杷葉湯:ビワの葉をメインにした処方
枇杷葉・陳皮・丁子・茅根(ぼうこん)・麦門冬・木爪(ぼけ)・甘草・香じゅ(こうじゅ)
<食べ物の注意>
虚証の弱った胃腸にあっさりした食べ物がよいのですが、こってりしたものは消化吸収に多くのエネルギーを消耗し、胃腸を弱めてしまいまいます。
結局、消化不良であまり吸収されずに排出されてしまうことになります。
夏にはスイカ、キュウリ、トマトなどあっさりしていて、咽喉の渇きをいやすようにできているものが多いですが、それが自然の摂理というものでしょう。
しかし三大栄養素のひとつ、脂質はある程度、摂らないといけませんね。ウナギや豚肉などには、ビタミンB1が多く含まれていることはよく知られています。
ただし、夏は胃腸が弱りがちなので、動物性より植物性がオススメ。
あっさりしていて、自然に近い、「ゴマあえ」などを食べるように心がけたいものです。
同じく、タンパク質についても、夏は大豆(納豆、枝豆)や小魚類で補うのが望ましいでしょう。
こうした食生活が、夏バテを防ぐ道です。(松田 昇、東洋医学研究家、薬剤師)
コメント