◆はじめに。言語の違い
日本語の更年期は、メノポーズ(menopause)と英訳されることが多い(★1)ですね。
18世紀末、meno(月経)がpause(停止)するというところから造られた言葉です。
語源的には、閉経もしくはそれに伴う不調症状を意味するものとして使われています。
一方、日本語の更年期。「更」の字を広辞苑で調べてみますと、
①あらたまること。新しくなること(変更、更新)
②入れかわること(更迭)
③夜が更けること(深更)
プラス・マイナスどちらの意味もありますが、「変化」または「転換」といったニュアンスを含みます。
欧米語圏では「閉経に伴う不調」として造られた言葉(メノポーズ)が、
日本に輸入される時に「(中年期における)人生の転換期、変化期、ふしめ」という、より長期的で大きな概念に変化した経緯があるようです。
実は欧米(英語)のメノポーズと、日本の更年期は、その意味するものが異なっているようです。
欧米の学術研究では、ホットフラッシュ(ほてり、のぼせ)や寝汗が多く報告されますが、日本ではそれほどでもないことがあると言われます。
このような差は、人種の差というよりも、研究者のとらえ方、調査を受ける女性たちの受け止め方の差が原因である可能性があります。
★1:他に、クライマクテリウム(climacterium)と訳されることもあります。
クライマクテリック(climacteric=閉経)前後の身体的・精神的な危機をはらんだ変化という意味が含まれており、こちらの方が日本語の『更年期』に近いと言われています。(クライマクテリック、クライマクテリウムには日本の厄年に近い意味が含まれます。)
◆あなたはどちら?
このような言葉の違い、受け止め方の違いがあることを理解しておくことは大切です。
なぜなら、
*閉経直前直後(特に後1年)の不調を言うのか(メノポーズ)、
*前後10年くらいの(変化を含めた)不調をまとめて言うのか(更年期、クライマクテリウム)、
それによって、症状やその程度も違ってきて、正確なコミュニケーションの障害になる可能性があるからです。
特に、更年期障害のことが気になって受診する場合、自分がどちらで話し、ドクターがどちらで答えているのかを、考え、理解しておくことは重要です。
◆更年期=更年期障害(更年期症候群)ではない
私たちが集めた女性5000人のデータでは、更年期世代(★2)のすべての人が悩んでいるわけではなく、全体の中では、むしろ少数派だということを確認しています。
次回からこのあたりを、データ分析を交えて紹介してゆくことにします。
★2:(日本での)更年期の定義
閉経前後の一定の期間を指します。
個人差はありますが、日本人は満50才が平均的な閉経年齢とされています。世界的に見ても、ほぼ50才前後が閉経の平均年齢で、人種差は無いという見方が一般的です。
その前後5年間、45才~54才を、更年期と呼ぶのが一般的です。
このシリーズ(月2回ペース)では、更年期について、主に美容トラブルとその対策という点から報告してゆきます。
薬剤師で東洋医学研究家の松田さんには、専門の漢方や薬膳の分野から、更年期をゲンキに乗り切るための健康と美容全般の対策について提案していただきます。
なお、本シリーズで使用する『更年期』という用語は、更年期障害とイコールでないことをご了解ください。
※参考資料
更年期~日本女性が語るローカル・バイオロジー~(みすず書房、マーガレット・ロック著)
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