ドラッグの売り場で、いつも人が絶えないのが目薬コーナー。
目薬を探す人の多くは目が疲れる、目が渇く、目がショボショボするなど。
わりと病的でなく日頃の仕事や生活に「ちょっとさしてみようかな!」という人がほとんどです。
今日は「疲れ目」(眼精疲労)の漢方についてお話してみましょう。
OA化が進み、パソコンと一日にらめっこの人が増え、目を酷使することが目だけでなく心身にも影響するという現象が起きています。
眼がショボショボしたり、かすんだり、眼の奥が痛んだり、さらに眼がかわくなどの方には、
眼精疲労の症状に加えて特異的な症状があればそれらに応じての漢方処方をチョイスしてゆきます。
代表的なものとして、以前にもよく登場してきました「補中益気湯(ほちゅうえっきとう)」や「八味地黄丸(はちみじおうがん)」等のおなじみのものが並びます。
「補中益気湯」は疲れやすい人向き。
「八味地黄丸」は加齢に伴う視力障害に。(「菊花(きくか)」を加える手もあります。)
眼のよく疲れる人に日頃の生活を聞かせてもらうと、のぼせや動悸、口渇いわゆる水毒(水に停滞や偏在)気味の方によく遭遇します。
水毒によく使う「苓桂朮甘湯(りょうけいじゅつかんとう)」を用いると効果的です。
中高年になると、「新聞が読みにくい」「文字も離さないと読めない」という「老眼」があります。
レンズの役割を果たしている水晶体が弾力を失って調節不能になる現象ですね。
東洋医学では体が老化することを「気」が衰えると「気虚(ききょ)」、腎の機能が衰えると「腎虚(じんきょ)」といい、
特に「腎虚」は老眼を始め様々な老化現象を引き起こします。
眼と肝臓の健康状態は密接にかかわっていて、肝臓は栄養を蓄え、体内に生じた毒素を分解して排泄してゆきます。
したがってその機能が衰えると全身の血液循環が妨げられ血も不足し、体の解毒作用も低下してゆきます。
その結果、老化が進み、かすみ目や疲れ目などの症状を引き起こすのです。
つまり漢方では、眼だけの対症療法に頼らず「気・血・水」を総合的に整えて、老化を防止する観点で処方します。
「八味地黄丸」は、別名「腎気丸」ともいい、気を養い、腎をおぎなうことを特徴としています。
他にも肝臓の働きを高めるものに、「大柴胡湯(だいさいことう)」「柴胡桂枝湯(さいこけいしとう)」などの柴胡剤もよく使われます。
(東洋医学研究家、薬剤師、松田昇)