前回から続きます。
【水滞(水毒)の肩こりに】
風邪をひいた時に良く使われる漢方として有名な葛根湯(かっこんとう)。
昔から葛根湯は万能薬と言われています。
昔は、藪(やぶ)医者のことを「葛根湯医者」といったくらい、使い道の多い処方。
葛根湯には葛根(かっこん)の他、芍薬(しゃくやく)、麻黄(まおう)、桂枝(けいし)、生姜(しょうきょう)、甘草(かんぞう)、大棗(たいそう)が組み合わされています。
このうちの芍薬は、漢方家の間では「腸管の水滞を汗と小便で体外に排出してしまう」という効き目があるとされています。
水滞を取り除きますから、どちらかというと体力が充実している実証タイプの肩こりに「葛根湯」の選択肢があります。
葛根湯は、家庭の常備薬としてお持ちの場合も多いと思いますので、肩こりの時にお試しください。
【お血の肩こりに】
また、肩こりでも特に首筋のこりは充血(血液の必要量過多が原因)しているといってもいいでしょう。血液の巡る量が多いわけですから、当然その余分に多い分が、滞って充血をおこします。東洋医学では、これを『お血(おけつ)』といいます。
首筋のこりが頭痛につながるのは、お血の部分が拡大し、頭部の充血が過酷になるという解釈をします。
このお血タイプの肩こりには桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)という処方があります。
桂枝茯苓丸は芍薬(しゃくやくの根)、牡丹皮(牡丹の根皮)、桃仁(桃の種)、桂枝(ニッケイ類の樹皮=シナモン)、茯苓(マツホドの菌核)の各当分の組合せです。
ここでも芍薬が登場しましたね。
桂枝茯苓丸は、お血症状の特効薬といわれ、首筋のこりから頭痛が連動する肩こりに効果があるとされます。
<どちらかというと虚のタイプの肩こりに>
体力中程度以下(虚証)の方には二朮湯(にじゅつとう)がフィットします。
虚証の五十肩の特効薬と言えるもので、やや全身水太りぎみで胃腸が弱いタイプの腕や肩が痛む場合に用いられます。この処方は白朮(オケラの根茎)、茯苓、陳皮(ミカンの皮)等12種類の生薬が組み合わさっています。
体力が低下して冷え性が伴う場合には附子(トリカブトの根)を加えた処方として桂枝加朮附湯(けいしかじゅつぶとう)があります。この処方は肩や上腕が痛む時に用いる処方です。(東洋医学研究家、薬剤師 松田昇)
<もう一言>
古い漢方家の一節では、右肩がこると腸管の水滞が原因であり(葛根湯タイプ)、左の肩がこるといわゆる血症といって心臓が疲労しているもので(桂枝茯苓丸タイプ)ともいわれています。
<ゼロポジションより>
肩こりのタイプは、肩こりの簡単チェック③でおおよそ理解できます。
疲労型の肩こりが(どちらかと言うと)実タイプ、冷え型の肩こりが虚タイプです。
混合型でも寝不足、ストレス、運動不足、ダイエットの愁訴感が強いほど、『寒』の傾向(カラダが冷える方向)となり、見かけ上、虚タイプのような状態になるようですので、そのあたり注意。特にご自分の生活スタイルからも振り返ってみてください。